「教育改革に関する意識調査2022」

OECDが各国の15歳生徒を対象に実施する学力調査PISAでの日本の成績は低迷、特に2012年の「第二次AIブーム」以降、地滑り的な低下が見られます。ここではむしろ「科学的能力」「数学的能力」が維持される反面、21世紀生まれの日本の若者の「読解力」は顕著に下がっており、社会の多様なニーズに応じた能力養成の必要性が指摘されています。

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OECD学力調査PISAにおける日本の成績推移(2000~2018)

Q1[AI社会化に耐える人材育成に向けた、教育の官民横断・多様化の必要性]

社会のAI化が進むことで中卒、高卒、各種学校出身者の失業率上昇が懸念されています。ここで国外に目を向けるとオーストラリアの大学進学率は90%、韓国やアメリカが70%台であるのに対し、日本の大学進学率は少子高齢化の中50%台に留まり、専門能力の育成に大きく改善の余地が残っています。他方2022年6月7日に閣議決定された「経済財政運営等改革の基本方針2022」では旧来とは比較にならない多様な教育、人材育成のニーズが指摘されています。このような状況下、我が国は

[官民横断] AI化以降の社会が求める多様な人材育成へ官民の枠を超えた教育改革

A ぜひ取り組むべきだと思う。                     

B どちらかといえば、取り組むべきと思う。               

C 取り組む必要はない。                        

Q2[各種奨学制度、教育バウチャーなどの拡充]

 経済的な理由で進学をあきらめざるを得ない青年への奨学金はもとより、一部自治体(https://www.city.hachioji.tokyo.jp/tantoumadoguchi/012/007/p003724.htmlなど)では、受験生の学習費用を無利子で貸与するなどの支援事業も行われています。我が国は

[奨学制度] 今後求められる多様な教育を支える各種奨学金、バウチャー等の制度

A 積極的に拡充すべきだと思う。                     

B どちらかといえば、拡充すべきと思う。                 

C 拡充の必要はない。                          

Q3[理系・文系の縦割りから、AI化以降の文理横断型へ、教育の柔軟性強化改革]

 AI化の進んだ社会では、旧来の文系型教育だけを受けた人材の雇用が激減する可能性が指摘されています。また旧態依然とした理系の枠(STEM=科学・技術/工学・数学等と称される)は不十分で、新たなシステムを創り出す創意(STEAM = 科学・技術/工学・芸術・数学等と称される)を育てる教育、これを更に推し進めた文理横断型への教育(STREAMM=科学・技術・人文熟慮・倫理・芸術・数学・音楽等と称される)への拡大が「経済財政運営等改革の基本方針2022」でも強調されます。

 人口が日本の半分である韓国は理系人材が日本の2倍、中国は22倍と概算され、日本が中韓の水準に追いつくことはすでに至難との指摘もありますが、日本の国力回復には、理数、情報能力を文系教科と「たすき掛け」した教育の拡充、強化が必要不可避と考えられます。

 しかし現実には、我が国の高等学校における文系理系の比率は長年「7:3」と言われ、数学を不得手とする7割が<消極的文系>として理系離れする状態が続き、単なる理系強化の議論では問題が解消できません。

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国立教育政策研究所「中学校・高等学校における理系選択に関する研究最終報告書」(2013)より

さらに少子高齢化の中、出口学力を問わない「履修主義」で進級、卒業が認定されてしまい、学習指導要領が教程の範囲を制限し縦割りを助長し続けることで、応用力が育たず、学力の地滑り的低下が続いていると考えられます。こうした実情を踏まえ、我が国は

[文理柔軟] 我が国の実情に合致した形で、文理の枠を超えた教育柔軟性の強化に、

A ぜひ取り組むべきだと思う。                      

B どちらかといえば、取り組むべきと思う。                

C 取り組む必要はない。                         

Q4[次世代教育に必要なコスト]

Q3で言及するようなAI社会で活躍できる人材を育成する教育には、指導そのものに加え、その教程の開発や、指導人材の育成などを含め、必要なコストが掛かります。大学課程での学生指導に限っても、学生一人当たり、現在の文系での育成コストの4倍程度が必要であると試算されています。そのような中、

[教育コスト] 文理横断型人材育成へのシフトに伴って必要とされる教育コストの増加

A よく認識している。                          

B 一定の範囲で認識している。                      

C 全く認識していない。                         

Q5[非認知能力と知育を融合する、指導者育成を含む教程流動性の強化/自由化]

AI社会で活躍できる人材育成には、19~20世紀までの教育で重視された「知育重視型」ではなく「非認知能力 Non Cognitive Ability (ノーベル賞経済学者 J.ヘックマンの用語)」が重視されます。美術、音楽、体育、演劇、創作などに関わる科目と、従来から主要教科と見なされてきた算数、国語、英語/外国語あるいは情報・デジタル機器に関する基礎科目とがたすき掛け的に融合した、科目間流動性に富んだ次世代型の教育が必要であり、むしろその観点から基礎科目教程の抜本的見直しの重要性も指摘されています。「経済財政運営等改革の基本方針2022」においても、社会の多様なニーズに応じた教程の見直し、多様化と自由化の促進が謳われており、それに即した教程の準備、指導者育成に取り組む必要があります。このような状況のもと、我が国は

[流動性と指導者育成] 科目間流動性の強化と次世代指導者の育成を

A ぜひ推進すべきである。                        

B どちらかといえば推進すべきである。                  

C 推進する必要はない。                         

AI化以降の次世代で活躍できる人材育成のため、教育の刷新を図る場合、小規模な公共投資や短期で終わる教育事業では十分な効果が上がらず、かえって経済力を損ねる可能性を、慶応義塾大学経済学部の藤田康範教授は指摘しています。

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またOECDの全世界的な学力調査PISAとその国の一人あたりGDPの間には強い正の相関が見られます。ジョージア工科大学のEric di CorradoらはPISAの数学的能力の成績と各国の一人当たりGDPの相関を調べ、PISA数学の成績スコア100点が一人当たりGDPの額にして2倍~5倍に相当する結果を発表しています。

                                                                                                  

国民経済の成長を見る上でPISAの成績スコアは極めて鋭敏な指標となっており、かつて数学で世界一であった日本はPISAすべての科目でトップを目指す教育に注力すべきという主張もあります。実際OECDの教育指針2030 (The Future of Education and Skills 2030)が我が国の文部科学省でも政策立案の基礎に位置付けられています。

Q6[改革の長期継続性] AI化以降の次世代人材を育成する長期継続的な取り組みを、

A ぜひとも大規模に推進すべきである。               

B どちらかといえば推進すべきである。                  

C 推進する必要はない。                         

Q7[安定財源の確保] 我が国の次世代を担う国民を育てる中長期的な教育拡充のために

A 教育国債などの安定した財政措置が必要と思う。             

B 教育国債などの安定した財政措置の必要性は認識している。        

C 教育国債などの財政措置は必要ない。